令和3年第3回定例会で、自由民主党議員団を代表して代表質問に登壇しました。
自民党の持ち時間70分の内54分44秒を使い、経済活性化や次世代へのレガシー継承等、大きく7項目の区政課題について討論。議員就任以来2年間、地域の皆様と温め練ってきた政策提案や質問を盛り込んだ原稿は2万文字を超えました。
コロナ禍での経済活動や区民活動の停滞の中、6月下旬頃からの新型コロナウイルス第5波の感染症急拡大は区政運営に多大な影響を及ぼしており、今回の質問のタイミングで新たな事業提案を行うことは困難でしたが、担当者と協議を重ね、いくつもの事業を実現に向けて前進させることができました。
これからもより魅力的な渋谷の街づくりのため、新しい発想で施策提言してまいります!
令和3年第3回定例会 9月13日一般質問
渋谷区議会自由民主党議員団・代表質問
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私は、渋谷区議会 自由民主党 議員団を代表し、質問いたします。
その前に一言(いちごん)申し述べさせていただきます。静岡県熱海市で7月に発生した大規模な土石流ではこれまでに26人が犠牲となりました。災害発生から2か月となりますが今なお行方不明者の捜索活動が行われ、150人程の方々が避難生活を続けており、ライフラインの復旧や地域の復興への道のりは遠いままです。犠牲となられた方々に謹んで哀悼の意を表するとともに、被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。
昨日期限を迎えた緊急事態宣言は、19都道府県において期限を30日まで再延長することが決定されました。変異を続ける新型コロナウイルスに医療現場の混乱は続き、今なお予断を許さない状況です。本区のワクチン接種は先ほど区長発言にもあった通り、順調に推進されていることは評価いたしますが、様々な理由でワクチンを接種できない人もいます。ワクチンハラスメントが生じないように啓発も必要です。今回の新型コロナウイルスの蔓延に際し私の脳裏に浮かんだのは篠田節子さんの「夏の災厄」という作品でした。これは未知の感染症でパニック状態に陥る社会で、感染防止と原因究明に奔走する市職員らの必死の対応や予防接種をめぐる攻防を描いたパンデミック・ミステリーです。25年前に発表された作品ですが、改めて読み直すと現状に酷似しており、昼夜を問わず最前線で必死の対応を行っていただいている医療従事者、保健所の職員の方々、エッセンシャルワーカーの皆様に改めて感謝を申し上げます。
さて歴史を紐解くと、14世紀に蔓延した黒死病・ペストは世界全体で猛威を振るい、ヨーロッパでは人口の60%が命を落としたと言われます。度重なるペストの波が長期化・慢性化することにより、ヨーロッパでは社会変化の必要が加速され封建社会が崩壊し、絶対王政へと移行することになりました。約100年前に流行したスペイン風邪はまさに近現代的な伝染病で、大規模な遠隔地への高速移動がウイルスを瞬く間に世界中に拡散させ5,000万人以上が亡くなったと推定され、第一次大戦の終結の遠因になったとも言われています。
このように、パンデミックは“社会が大きく変化するきっかけ”となり、それまで、進行してきた事態が加速します。今回のコロナ禍では徐々に浸透しつつあった働き方改革が急激に進行し、働くことに付随する様々な固定観念が打ち壊されました。オンライン会議をはじめとするリモートワークが標準化し、人々の居住場所に対する概念も大きく変化しつつあります。
また、コロナ禍で再認識されたのは、人はひとりでは生きられない、孤独や孤立には耐えられないということでした。物質的に充足していても、他者とコミュニケーションを取り、温もりを感じ、自分の居場所をみつけられなければ本当の意味で生きていけないのです。そこで政府は今年、コロナ禍で深刻さを増す孤独・孤立問題の対策室を内閣官房に設けました。2018年1月、英国では「孤独は現代の公衆衛生上、最も大きな課題の一つ」として、世界初の「孤独担当大臣」を任命し「対孤独戦略」で2000万ポンド(約28億7000万円)を計上したと仄聞しております。これは孤独が医療費や経済を圧迫しかねないがための対策ですが、孤独・孤立は認めることは恥である、弱いからだといった認識が強く表面化しづらい問題です。低所得者ほど孤立に陥りがちですが、他人を煩わせたくないと隠したがる傾向があります。コミュニティの大切さ、人との関わりの大切さを改めて認識した今、日本でも社会的不安に寄り添い、深刻化する孤独・孤立を防ぐ社会変革の推進が求められていると考えます。
社会の変革が急激に進む今、人生100年時代を迎えるにあたり、時代のニーズに応えていくには、区政運営においても歴史に学び、パンデミックが終息した後の社会の変化を見据え長期的視点に立った政策が必須です。そして前例や周囲の動向に従うばかりでなく、大きく変化する時代の機微を捉え、想像力によって未来を切り拓く視点を養っていかかなくてはなりません。区民ニーズに応え、目の前の困難や課題に取り組むと同時に、誰も取り残さない持続可能な社会を構築し、ウィズコロナ・アフターコロナの時代の先を見据えたまちづくりを行っていくことは本区に求められた使命であると考えます。
このことを踏まえ、以下、質問いたします。
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1.新型コロナウイルス感染症対策について
都内の新型コロナウイルス感染症の新規感染者数はようやく減少しつつありますが、医療現場の混乱はまだ続き、今なお予断を許さない状況下です。更なる感染拡大を防ぐための対策や完治後の対応が必要です。
コロナに羅患(りかん)した際の体力低下はインフルエンザの比ではなく、自宅療養を余儀なくされた単身者は自己治癒力を頼みに療養をするものの不安で押しつぶされそうになると話してくれました。自宅療養中に死亡したケースは千葉県や埼玉県でも発生しています。自宅療養患者から希望がある場合は医師会と連携して往診医を派遣し薬の調合や診療を行っていることは承知しておりますが、辛い病状の中、病院を盥回しになったり、コロナ難民となる方が出ることのないよう、重症化する患者を早期に見極め、重症患者を減らし医療体制のひっ迫を防ぐため、まだ軽症のうちに完治するための体制整備が必要です。オンライン診療の導入も必要と考えますが、本区の対応について区長の所見を伺います。また先日、世田谷区ではコロナ罹患者の半数に後遺症が認められたという調査発表がありました。完治後も罹患前のように働けないと訴える人は多く、味覚障害や倦怠感、頭痛、異常脱毛といった症状が長期間続く新型コロナの後遺症「ロング・コビット」が発生しています。今後大きな問題になっていくことが懸念されますが、本区としてはどのような対策を検討しているのか、区長の所見を伺います。
2.避難所運営について近年では秋に強力な台風が多々発生し被害をもたらしており、首都直下地震の発生も危惧されます。本区では「渋谷区業務継続計画」を策定していること、避難所については感染症予防に留意した「渋谷区避難所運営基本マニュアル」を策定し、避難所の運営にあたっても新たに感染症対策を盛り込み、密を避ける運営が規定されたのは承知しています。しかし、感染拡大が現在の想定以上の深刻なものになった場合の対応が必要と考えます。
今後更に感染が拡大した状況下で災害が発生し「行政も被災する深刻な事態」となる場合の業務継続計画及び避難所運営計画について、区長の所見を伺います。
次に、避難所の災害対応の見直しについてです。
先日、ある自主防災組織から、備蓄倉庫の鍵が合わず開けられないという問い合わせがありました。確認したところ、その自主防災組織の備蓄倉庫は委託事業者の管理下にある施設の中にあり、毎年1月17日の「渋谷区防災点検の日」には備蓄倉庫の点検を行っていたものの、いつも委託事業者が鍵を開錠していたため合わない鍵を保有していたことに長年気づいていなかったとのことでした。
区の施設は近年委託化が進んでおり、現在避難所及び自主避難施設46箇所中18箇所、また二次避難所14箇所のうち民間施設を除く施設はその全てが委託または指定管理者による管理施設となっています。渋谷区地域防災計画によると、災害発生時には避難所となる施設の管理者が災害対応にあたることになっています。しかし、委託先との協定が再整備されていないものも多く、夜間や休日など施設が開館していない場合、備蓄倉庫を開錠すらできないことになります。
また、その他の避難所の多くは学校に設置されており、備蓄倉庫の鍵などは学校管理者が保管しています。そして指定地域においては町会長に鍵を渡し管理していることが多いわけですが、町会長の交代などで体制が変わり引継ぎや連絡が行き届いていないことも考えられます。
委託化が進む区の施設における協定を見直すとともに、全ての避難所において災害発生時の対応が機能しているのか検証と定期的な確認が必要と考えますが、区長の所見を伺います。
なお、今後の課題を明らかにするためにも、鍵の開錠から全てを災害発生時を想定した実践的な訓練を行い、避難所から二次避難所への避難や受け入れ、災害時要配慮者の避難プランに沿った避難訓練の実施等、現体制が本当に災害時に有効なのか検証する必要があると考えます。まずは毎年9月1日の「防災の日」に実施される総合防災訓練や「渋谷防災キャラバン」で実証実験を行ってはいかがでしょうか。災害発生時を想定した実践的な訓練を区主導で実施し、その結果を地域に波及させていくことにより、災害時に有効な体制を整備・構築できると考えますが、区長の所見を伺います。
新型コロナウイルス感染の自宅療養者へのオンライン診療の導入や、罹患者の完治後に長期間続く後遺症「ロング・コビット」への対策を要望しました。
また、新型コロナウイルス感染症が更に拡大・蔓延した状況下での業務継続計画や避難所運営計画の有効性検証を提言。災害発生時に誰も取り残すことのないよう、二次避難所への避難や受入、災害時要配慮者の避難訓練など、災害発生時を想定した職員の実践的訓練の実施を提言。委託化が進む区施設避難所等での有事対応の検証と確認を要望しました。
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1.東京2020大会のレガシーについて
東京2020大会は、2013年の招致決定から8年間の準備を経つつも一年間延期となり、本年コロナ禍の中9年間の集大成として無観客での開催となりました。招致が決定されたときの高揚感や、長年準備に奔走されてきた担当者の御苦労を考えると残念な思いもあります。しかし、その準備の過程の中で、区民の方々の意識は確実に変わってきたのではないかと考えます。
「ちがいを ちからに」を謳い多様性の推進を掲げてきた本区では、先程区長発言にもありましたとおり、パラスポーツを中心に「する・見る・支える・応援する」を標榜(ひょうぼう)してオリパラ推進事業に取り組んできたことは承知しております。今後も「パラスポーツの大会実施など様々な形で継続していく」、と先ほどの区長発言にもありましたが、本区のスポーツ推進計画では、スポーツ施策を「する」「見る」「支える」に加えて「つながる」の観点からも体系的に整理しています。パラスポーツは年齢や性別を超えて幅広く楽しめます。当該計画をパラスポーツ推進にも適用し、普及やパラリンピアンの応援、ボランティアの活性化、パラスポーツを通じた多世代交流と地域コミュニティの活性化推進、といった形でスポーツの裾野を広げ、オリパラ準備の取組を大会開催の価値あるレガシーとして継承し、次世代に繋げていくことができるのではないでしょうか。
大会が終わった今、醸成された機運をとらえ、本区でどのようなレガシーを具体的に構築していくのか、区長の所見を伺います。また、各小中学校では3~4年前から機運醸成のためオリンピック・パラリンピックの理解度を上げるため、様々なオリパラ教育を行ってきたことは承知しております。その集大成として実施された「学校連携観戦プログラム」では区立小学校17校・中学校7校、合計3,127名の生徒がパラリンピック会場でパラスポーツを目の前で観戦しました。世界最高峰のパラリンピアンの活躍をリアルに見ることができた子どもたちの感動は想像に難くありません。
子どもたちの貴重な経験を、オリパラ教育のレガシーとしてどのように残していくか、教育長の所見を伺います。例えばその感動を子供たちの絵として街中に残すのはいかがでしょう。現在本区では「落書き消しプロジェクト」として通報すると落書きを消してもらえます。しかし、折角綺麗になってもそのままでは再び落書きされてしまうのが課題です。一方、高架下など子どもの絵が描かれている場所には落書きの被害はほとんどありません。割れ窓理論としても地域防犯の一助になりますし、本区の就学前プログラムの参考とした世界最高峰の幼児教育のひとつと言われるイタリアのレッジョエミリアを本区でも実践することに繋がり、街中に子供たちの絵があふれ子供の存在感を示すことになると思います。区長の所見を伺います。
2.渋谷文化の再評価と継承について本区には文化の双璧として白根記念渋谷区郷土博物館・文学館と松涛美術館があり、興味深い展示が行われています。また、文化遺産の解説について昨年からQRコードによる多言語化を進めていることは評価いたします。
一方、先日文化遺産の候補リストを拝見しましたがそれほど数は無く、基本的に民俗学的なものばかりでした。渋谷区には文化的なものはあまりないという意見もありますが、私は本区には近代建築や近代文化に目を見張るものが多くあると考えています。例えば、渋谷駅の岡本太郎の壁画は芸術的にも歴史的にも価値あるものですし、街中を歩いていると、シェ・松尾の松濤レストランやメゾン・ド・ミュゼをはじめ、個人宅にも多くの趣のある建物を見かけます。
しかしながら近年そのような貴重な建物の中には再開発や老朽化、所有者の相続の関係等で惜しまれながら取り壊されているものも多くあります。幸い、同潤会アパートは白根博物館で解体前に入手した貴重な資料や当時の写真などが収集・展示されており、また表参道ヒルズにおいてその外観が安藤忠雄の設計により忠実に再現され「同潤館」として商業施設の一部になっています。JR山手線で最古の木造駅舎として知られた原宿駅舎は先日解体され、今後は外観を再現して建替えられる予定です。
また渋谷の街からは数多くの若者文化が生まれました。しかし当時は一世を風靡したものも、流行が終われば消えつつあり、その後に生まれた人は存在自体知らないものも多々あります。
そのような近代文化遺産や渋谷カルチャーについて、専門家による鑑定や再評価を行い、保存し後世に残すことが必要です。そのまま残すことはできないものも、アーカイブ化し、展覧会や特集を行うことで多くの人に触れ知ってもらうことに意義があります。専門の職員がいないため難しいというのであれば、区内の専門家や関係機関・団体等にご協力いただくことも可能と考えます。
近代文化遺産や渋谷カルチャーを再評価し、広く知ってもらい、後世に残していくことについて、区長の所見を伺います。3.戦争の記憶の記録と次世代への継承について高齢の方と親しくなると必ずといっていいほど、集団疎開で辛かった思い出、焼け野原になった衝撃、そんな戦時中の体験を話してくれます。5月24、25日の山手大空襲では合わせて4,413人の方が犠牲になりました。「表参道の灯籠横には多くの被災者が積み上げられ、今尚灯籠に黒く残るシミは亡くなられた方から出た油の跡、行方不明になった家族を探して積み上げられた一人ひとりの顔を覗いて回った…」そんな話も、わざわざ私を現地に連れて行き切々と話してくださいました。自分の経験を話したい、伝えたいという思いが確かにあることを感じます。
私は小学生の時、祖父から戦争体験を聞き、それを自由研究としてまとめて発表したことがあります。今でも折に触れて思い出しますが、当時小学生だった私にはわからなかった祖父の気持ちの機微も、戦争当時の祖父の年齢を超え新たに思うところもあり、辛い経験を話してくれたことに感謝しています。
しかしそうした経験もいずれできなくなります。戦後76年を迎え、戦争を経験した方は年々少なくなっています。残念ながらいずれはいなくなってしまうでしょう。この悲しい経験はレガシーとして、残し伝えていかなければなりません。
現在渋谷区の子どもたちは学校で戦争について学ぶ機会は教科書でしかないと伺っております。まずは戦争を知り平和について考えるため、子供たちに戦時中の体験を聞く機会を今年度スタートしたシブヤ科の中に組み込んではいかがでしょう。実際に戦地に行かれた方の多くは高齢者施設にいらっしゃるかもしれませんが、学びのハイブリッド化推進の一環としてオンラインで交流は可能ですし、話している様子を録画してアーカイブ化し残すことができます。子どもたちにとっても、身近な人から聞く戦争の経験は考えさせられるものがあるはずです。
戦争体験の語り部など平和教育の実施について、教育長の所見を伺います。また、本区では平成14年に区制施行(せこう)70周年を記念し、10月1日を「平和・国際都市 渋谷の日」と定め条例を制定していることは承知しております。来年は区制施行90周年となりますが、この機会に体験談や戦争遺産収集の編纂事業を行ってはいかがでしょうか。編纂書籍は図書館に保管するとともに、先人の貢献を次世代に伝えていくよう、毎年10月1日を含む週に“平和・国際都市 渋谷Week”としてイベントを開催してはいかがでしょうか。
歴史を学ぶことは未来をつくることです。今残さなければ永遠に失われてしまう先人の戦争体験について、区制施行90周年を機に本区の貴重なレガシーとして編纂し、イベントを開催し、次世代に継承していくことについて、区長の所見を伺います。
東京2020大会のレガシーを本区として今後どのように構築していくか所見を問い、「学校連携観戦プログラム」の貴重な経験を活かし、オリパラ教育で育んできたボランティアマインドや障がい者理解などの資質をレガシーとする学校の取組の推進を提言しました。
また、今残さなければ永遠に失われてしまう先人の戦争体験を記録しレガシーとして次世代に継承するため、シブヤ科等での戦争体験の語り部など平和教育の実施や、街中でのイベントの開催を強く要望。近代文化遺産や若者カルチャーを再評価し、「渋谷文化」として広く世に知らしめ、後世に残していくための体制整備を提言しました。
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1.商店街の活性化支援について
例年商店街では様々なイベントを開催し、人を集め、街の賑わいの創造や商店街の活性化につなげていたわけですが、コロナ禍で人を集めてはいけないという状況下で商店街も店舗も苦境に立たされています。イベント補助金はあっても活用方法を見いだせないという商店街の声を受け、先日、オンラインでのイベント事例や補助金の活用について、区の担当者に協力いただき説明会を開催しました。他の商店街はどんな取り組みを行っているのか、オンラインで人を集めずにどんなイベントが行われているかを知り、模索するための取組でしたが、商店街の方々からは活性化したくても現在の補助金では使えないものや制限があるので、「渋谷区商店街緊急支援補助金」のようにもっと使い勝手の良い支援にならないかという声が上がりました。
コロナ禍にあえぐ商店街の支援と新たな取組のため、区として更なる対策を検討できないでしょうか。商店街活性化のため補助金として新たなものを新設することについて、区長の所見を伺います。
2.社会的起業家支援について社会的課題解決には新たなアイデアで事業を展開させる民間の力が重要な役割を果たすことが期待されます。これまでスタートアップ企業というと利益追求を優先し社会課題を顧みないイメージがありましたが、近年は本業を通して社会的意義を追求する企業も多く、実際本区で募集した社会課題の解決を目指した実証事業には160を超える企業から応募があったと仄聞しております。本区ではスタートアップ支援事業にも積極的に取り組み、官民協働で地域課題解決をするための仕組みがいくつも用意され稼働しているのは承知しておりますが、これらを実践的に機能させるための協創の「場の整備」と資金支援のための「財源の確保」の2点についてお伺いします。
1つ目は、協創の「場の整備」です。本区では民間企業と様々なパートナーシップを締結し、積極的に官民協働して住民サービスの充実や行政効率化に取り組んでいること、その一環で、民間企業に協力いただき社会課題を解決しようとする産官学民が集える場を提供していることは承知しております。ただし、その提供は時限的で、現在使用している場も令和3年9月までしか使えないと仄聞しております。また、志を持つ人たちが同じ空間に集い切磋琢磨することは相乗効果を生みますが、事業拠点が集積する場はまだありません。起業家の集積拠点を行政主導で恒常的に用意する必要があると考えます。
【協創の場としての「LABO」の創設】
また、実証事業の実施までつなげられる場「LABO」を設け、地域経済・社会の活性化の推進のため解決すべき課題について長期的視点で考え、本区が進めるダッシュボードやビッグデータも活用し実証事業を行うことは区民サービスの向上に資すると考えます。このLABOには、区民の参画が不可欠です。欧州北部などでは70年代頃から、市民などが参加し、コミュニティ全体でまちをデザインし、社会課題を解決していく「リビングラボ」という手法が独自に提唱され実践されています。翻(ひるがえ)って本区では、地域住民がリーダーとなって進めている数多くの活動に対してササハタハツまちラボが支援することで新たな地域コミュニティが生み出されています。当該「LABO」で地域コミュニティから生まれつつある起業家等の育成プログラムや研修を行い、著名な起業家を講師として招いたハイブリッドな講習会や交流も考えられます。オンライン上でもコミュニティを形成させ会員内外での情報共有や交流も可能です。【起業家の恒常的な集積拠点の形成】
本区における起業家支援のため起業家の集積拠点を設けること、社会課題解決のために、区民をはじめ多様な産官学民のコミュニティの構成者が参加でき実証実験や研究、新しいチャレンジを推進する場として本区における行政主導の「LABO」を創設することについて、区長の所見を伺います。2つ目は、資金支援のための「財源の確保」です。
起業家にとって、事業の展開には資金が必要ですが事業のスタートや継続において最も頭を悩ませる問題の一つです。一方、本区においてはコロナ禍の影響による経済停滞と税収減が見込まれる現下の状況において、区民サービス維持のための行政経営の努力は必要不可欠で、社会的な事業であっても補助金や助成として容易に支出できない状況です。【資金支援のための「財源の確保」】
令和3年第2回定例会でわが会派から提言した通り、事業の成果指標の設定と評価による改廃などの事業見直しや、新たな民間委託手法による行政運営の効率化の検討は不可避な状況であり、この点を令和4年度の予算編成方針に盛り込んでいただいたことは評価します。限りある財源で区民サービスを提供するために、これまでも民間の活用という点では、わが会派から提言した民間委託事業の成果連動型支払契約による財源確保案や、区庁舎や公共施設のPFIやPPPでの建設費、整備費への民間資金の活用を本区でも実施してきたことは承知しております。社会課題解決のために区が自前で事業実施するより、民間委託によって行政コストの削減と高い成果を得られるようになり、財源の一部を民間から調達して成果が出れば行政が報酬を払う手法によって事業の総コストを抑えることもできます。
コロナ禍で困窮する商店街の活性化支援と新たな取組のため、区としての更なる消費促進策や補助金の設置を提案しました。
また、社会課題解決を目指した事業をビジネス展開する社会起業家を支援するため実証事業や研究を行い新しいチャレンジを推進する場として行政主導の「LABO」の創設を提案。恒常的な事業拠点の集積地形成や、資金支援のための財源確保として「ソーシャル・インパクト・ボンド」等民間からの事業資金調達を伴う成果連動型民間委託の導入により、行政コストの削減と高い成果の実現を強く要望しました。
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1.低炭素なまちづくりについて
世界的な低炭素化の潮流の中、日本は「カーボンニュートラル」として2050年までの目標達成を宣言しました。本区では渋谷区全域を対象に、渋谷のまちの賑わいを維持しながらエネルギーの賢い使い方を同時に進めるための指針として「渋谷区低炭素まちづくり計画」を作成し、もっとスマートなエネルギーの使い方やまち全体として二酸化炭素を減らす方法を検討し、低炭素社会の実現に向けて様々な取組が行われています。一方、日本の二酸化炭素排出量(12億2700万t)のうち、自動車は全体の15%を占めており、低炭素化推進のポイントとなるのは電気自動車の普及であると考えます。
しかし、電気自動車はバッテリーが高価なため車本体の価格が高額になることや給電場所が限られていることが普及を妨げています。本区でも低公害車の融資を行っていますが、申請件数は令和元年9件、令和二年は4件でした。各種団体から要望も出ておりますが、電気自動車の更なる普及のためには個人宅や駐車施設等への給電設備の設置が必須と考えます。本区における低炭素なまちづくりに寄与する、電気自動車の普及のため給電設備設置の助成を行うことについて、区長の所見を伺います。2.ササハタハツの賑わい創出と多世代共生型住宅の整備について令和元年第三回定例会では多世代共生型住宅の渋谷区での実現に対する我が会派の質問に対し、代々木二・三丁目の国有地を活用し多世代共生のモデルとなる区民住宅を整備していくと答弁をいただき、住宅マスタープランにも取り上げていただきました。しかし残念ながら代々木の国有地の取得が難しくなり、代替地(だいたいち)がないことから頓挫していることは承知しております。
そこで、今後笹塚・幡ヶ谷・初台で実施されているササハタハツまちづくりの中で整備するのはいかがでしょうか。昨年ササハタハツまちラボが立ち上げられ、市民共創プロジェクトの活動支援が進められていることは承知しております。今後、玉川上水旧水路緑道の利活用を通じてコミュニティ活動の場を創りあげるために、区民や企業と協力して官民連携によるプロジェクトが展開されると、次はまちの賑わいの創出のために水道道路沿いの整備が必要になると考えます。
水道道路はいくつもの商店街が交差している好立地であり、資源の宝庫です。当該エリアの整備を進めることでササハタハツまちづくりが加速される可能性を秘めていると考えます。当該事業の中で多世代共生型住宅を整備し、コミュニティマネージャーの下テーマに応じた助け合いを条件に多世代が交流し共生できるような住み方を実現できないでしょうか。居住支援協議会を設置し、民間事業者の協力を得てコーディネイターを配置して進めることも可能で、ライフステージに応じた住み替えの実現や単身高齢者のセーフティネットとしての住宅、ハウスリースバックといったものも検討できるのではないかと考えます。ササハタハツまちづくりにおける水道道路の整備による街の賑わいの創出と、多世代共生型のまちづくりの推進について、区長の所見を伺います。3.ハロウィーン対策とバーチャルなまちづくりについて昨年の渋谷でのハロウィーンは一昨年(おととし)の混乱への反省から、モラルとマナーに期待するキャンペーンを展開し、大きな混乱もなく終えることができました。今年のハロウィーンは週末にあたります。今回のコロナ禍の波はようやくピークを越えたと言われていますが、第六波の到来も懸念される中、街中に人が密に集まる事態になっては大変です。
また、昨年本区では3密を避けた新しいハロウィーンスタイルとして「集まらないハロウィーン」を発信した結果、本区公認の仮想空間「バーチャル渋谷」で開催されたバーチャルイベント「ハロウィーンフェス」が話題になりました。コンサートやイベントを行えないエンタメ業界の方々からは、こうしたバーチャルの場を普及させて活動の場が欲しいという切実な相談も受けます。米国では今勢いを増しつつあるバーチャルリアリティですが、日本での認知度やプレイヤーの数はまだ多くありません。今年のハロウィーンではどのようにバーチャル渋谷を活用するのでしょうか。また毎週定期的にイベントやコンサートなどを行うなどして認知度を上げ利用者を増やし、コロナ禍で苦境に立たされたエンタメ業界の方々の活動の場を広げられないでしょうか。
バーチャルなまちづくりとしてのバーチャル渋谷の今後の展望や、エンタメ振興の場づくり、今年のハロウィーンにはどのような対策を検討しているのか、今年のハロウィーンでの「バーチャル渋谷」の活用について、併せて区長の所見を伺います。
低炭素な街づくりのため、電気自動車普及に向けた給電設備の設置に助成を要望しました。また、水道道路沿整備による街の賑わいの創出や多世代共生型の住まいの整備、ハロウィーン対策、「バーチャル渋谷」を活用した街づくりにおけるエンタメ支援の推進等について所見を問いました。
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1.今後の本区のデジタル化推進のビジョンについて
9月1日にデジタル庁が創設されました。同日開設されたHPはアクセスが集中し繋がりにくい状況になっており、関心の高さが伺えます。他国では1990年代から推進していた国が多くある中で出遅れた感は否めませんが、まずは第一歩を踏み出したと考えます。
本区では他の地方自治体に先駆けてデジタル化を進めてきたことは承知しております。3月に総務委員会で「スマートシティ」についてはダッシュボードの形成と、民間にビッグデータ分析のための公募を始めると報告がありました。スマートシティの推進やビッグデータの集積と活用は社会課題解決に寄与すると考え期待します。
デジタル庁創設により本区や23区の事業推進に影響はあるのでしょうか。スマートシティの推進と社会課題解決のための今度の展開やビッグデータの収集・活用についての具体的スキーム、本区のデジタル化推進のビジョンについて、区長の所見を伺います。2.デジタル・デバイドの解消について【シニアのデジタル・デバイド解消】
デジタル化による社会変革が進み益々問題になるのが、ICTを使える人と使えない人に格差が生じる状態、すなわちデジタル・デバイドの解消です。我が会派からの令和二年第二回定例会での質問に応えていただき、スマートフォンの無償貸与や「なんでもスマホ相談」を推進していることは評価いたします。
私はかつてIT革命と呼ばれる頃からデジタル・デバイドが問題になってくると考え研究課題にしていました。これまでも草の根的に、地域の高齢者にスマホの勉強会を行っています。当初は、あるグループのスマホ所有者は6割弱で、電話以外使わないという方やアプリは悪用されるのではないかと警戒していた方もいましたが、便利であること、仲間がはじめたこと、コミュニケーションを楽しく取れるようになることを知るとスマホを購入する方も出始め、先日は会合のZoom配信を行うことができました。今回スマホ貸与事業に応募した方々が貸与されれば、そのグループでのスマホ保有率は100%になります。
また、デジタル・デバイドの講習会を行った際、簡単な操作方法を実習してみましたが、講習中は静かに聞いていた方々も、間を回ると「もうすぐ90歳になるけどできるかしら」「私なんかがやろうとしても皆さんに迷惑かけないかしら」と活発に呼び止められるのが印象的でした。講演後のアンケートでも不安と期待の入り混じった様子が見られました。人がICTをはじめる動機付けとしてよく言われるのは、①便利だから、②必要だから、③みんなやっているから、といった理由です。しかし、シニアのデジタル・デバイド解消の課題として、つまずく前に立ち止まってしまっている状況であるという研究報告があります。多くのシニアは始める前に「こわい」「自分には関係ない」「むずかしい」といった先入観から入り口にも立てていません。知りたい欲求はあっても、“わからない→恐い→必要ない→損をしていることに気づかない”、という悪循環の中で格差が生まれているのが現状です。
しかし、これまで自分には必要ないと言い切っていたシニアの方々も、ワクチン予約時にネット予約できず苦労した経験からデジタル化は自分の生活に決して関係のないものではないと必要性を感じ始めており、今が推進のチャンスです。高齢者のデジタル・デバイドの解消においては、トップダウン式は難しく、ボトムアップで行っていかなくてはなりません。来るのを待つのではなく、こちらから働きかけを行うため、シニアクラブ等へ講師を派遣できないでしょうか。先日デジタル活用支援員を募集しており、第一回目の研修が終わったことは承知しておりますが、当該募集の際は40人の枠に幅広い年齢層から約200人の応募があったものの多くの方が抽選に外れてしまったと仄聞しております。こうした意欲のある方々にシニアのデジタルデバイスへの苦手意識の解消のために活躍頂くことは大変効果的と考えます。デジタル化推進のための更なる施策について、区長の所見を伺います。
【デジタル化の環境整備】
デジタル化を進め、利便性を向上させるには、同時に環境整備を行う必要があります。まずは情報通信ネットワークの整備の支援として、区内の全区施設でWi-fi環境を整備し、アクセスポイントを拡充できないでしょうか。
本区ではYCC代々木八幡コミュニティセンターと一部の図書館にFree-Wi-Fiの設置を行っているのは承知しております。しかし、その他の区施設には導入されてはいてもキャリアWi-Fiであるため、対象キャリアの人しか利用できません。必要に応じて費用対効果を鑑みて設置するのではなく、環境ありきでデジタル化を推進すべきです。少なくとも、デジタル・デバイド対策としてはシニア関連の施設に統一規格のWi-Fi環境の整備が必要です。区民の皆様からは、Wi-Fiがあれば活動をリモートにしたりパソコン教室を開いたりしたいといった声も寄せられています。
令和元年第三回定例会での我が会派からの本区全域でどこでも繋がれるFree-Wi-Fiの設置についての質問には、特に渋谷駅前は様々な組織が独自のWi-Fiを設置しており統一化は難しいと回答をいただきました。必要に応じて都度設置を行うとこのように規格がバラバラになり使いづらいものになりかねません。高齢者のデジタル・デバイドを解消するのであれば、まずはシニア関連の施設から統一規格のWi-fi整備を行い、デジタル化推進のための環境を整備していく必要があると考えます。区長の所見を伺います。【支援の場の拡充】
デンマークや米国などでは図書館などの公共施設を情報教育の場とし、常駐者に気軽に相談できる取組を行っています。今後は経済的事情に基づく格差の是正も必要となってきます。そうした区有施設の未活用スペースを活用して相談員を常駐させ、いつでも相談できる体制を構築できないでしょうか。区長の所見を伺います。また、生まれたときからICT機器に慣れ親しんでいるデジタルネイティブ世代の子供たちは、感覚的にICT機器を扱います。高齢者の中には仲間や子供に教わるのはプライドが許せないが、孫に教わるのは嬉しいという方も多くいます。エストニアでは「子ども先生」を設置し、活動に対する報酬は将来渡すという制度を設けていますし、港区ではデジタル支援員に大学生枠を設け、コロナ禍でアルバイトがままならない学生の働く場としています。こどもや学生をICT講師とすることは、高齢者のやる気を引き出すとともに、多世代交流にも繋がると考えますが、区長の所見を伺います。
デジタル・デバイド解消のため、シニアクラブ等への講師派遣や区施設への相談員常駐、デジタルネイティブ世代の子どもを講師とする多世代交流の機会を設ける等、支援の場の拡充を提案。経済的事情による格差是正も視野に入れ、統一規格のWi―Fi設置を進めるなど区内デジタル環境の整備を求めました。
また、区政課題を明確にするためにも二次利用可能なデータ公開によるビッグデータ分析の展開などスマートシティの推進を要望しました。
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1.地域共生社会の実現と地域福祉計画の策定
令和三年第一回定例会では、「福祉分野全体の方向性を示す『渋谷区地域福祉計画』を策定する予定であり、福祉施策を包括的に取りまとめることにより必要な支援が切れ目なく届くようさらなる強化を図ります」と区長発言がありました。これは「渋谷区長期基本計画」福祉分野の政策の一つである「地域における共生型社会の実現」の一環であり、包括的な支援体制を総合的に推進する計画と伺っております。
本区が渋谷区基本構想で掲げる「ちがいを ちからに 変える街。渋谷区」実現に向け、目指す地域共生社会のビジョンと、その実現のために本年度策定予定の地域福祉計画の方向性について、区長の所見を伺います。2.重層的支援体制整備事業の推進高齢化や単身世帯の増加、社会的孤立などの影響により、区民が暮らしていく上での課題は、様々な分野の課題が絡み合い複雑化しており、現状の制度利用や支援だけでは十分に対応できないケースも増加しています。例えば介護と育児に同時に直面するダブルケアや8050問題、ヤングケアラーや孤独対策、保育の質の向上、里親縁組、など、新たな課題の多くは現在個別の担当部署がありません。こうした分野の対策は、関連部署が協力しあう重層的支援体制事業の中で進めていくことが考えられます。この重層的支援体制整備事業とは、制度や仕組みの「支援のしづらさ」を少しでも改善し、「生きづらさ」を抱える人の生活を支援していこうとする事業です。本年からはモデル事業が重層的支援体制として法定化され、一部の自治体で取り組みが本格化しています。
本区では重層的支援体制事業を推進する予定であると伺っておりますが、実施には区関係所管の横断的な取組が必要であり、既存の制度間の仕切りは適切に残したまま、対象者別の制度の壁を低くすることで風通しを良くする必要があると考えます。スムーズな連携を実施するには阻害要因を検討することが大切です。
また、重層的支援体制の確立までは包括的な相談支援体制を構築し対処することも考えられますが、生活が立ち行かなくなる深刻なケースが発生する前に具体的な対処が必要となります。そのためにも早期の実態調査が必要で、他の自治体では調査機関に委託するなどして取り組んでいるところもあります。地域共生社会実現のため、どのように縦割りの弊害をなくして区関係所管の横断的な連携を行い、重層的支援体制を整備していくのでしょうか。また制度が整備されるまでの期間においては現在直面する課題にどのように対処し、実態調査を行うのでしょうか。本区における重層的支援体制整備事業のデザインやスキーム、スケジュールについて、区長の所見を伺います。
3.不妊助成について女性にとって男性にとって、社会においても、子どもを産むか産まないかは大きな問題です。かつて、本区では不妊治療に助成を行っており、東京都からの助成が始まった後も上乗せ助成を行っていました。しかし、東日本大震災後の混乱と業務見直しの中で当該助成は廃止されたと仄聞しております。不妊の原因は様々ですが、加齢によるものばかりでなく体質や遺伝的な問題で20代前半から治療している人も少なく無く、心身的・精神的負担に加えて高額な医療費から、子どもを持つことをあきらめざるを得ない方も少なくありません。
国ではそのような状況を鑑みて、不妊治療への所得制限の撤廃等を行い助成対象を拡大したことは承知しております。それに合わせて本区としても経済的負担の軽減を図るため、国の助成対象者に更に上乗せして助成を再開できないでしょうか。区長の所見を伺います。
一人一人が生きがいや役割を持ち、助け合いながら暮らせる地域共生社会の実現に向け、ヤングケアラーや8050問題、孤独対策といった新たな課題についても、区の関係する所管の横断的な取組による包括的な対処や重層支援体制の構築を提言しました。
また、不妊治療の高額な経済的負担軽減のため、国の助成に区独自の上乗せ助成を実施し、子どもを望む人が産み育てやすい社会の実現を要望しました。
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1.「渋谷区いじめ防止等対策推進条例」について
本定例会で提案された「渋谷区いじめ防止等対策推進条例」は、本区が本気になっていじめ防止に取り組み総合的かつ効果的な対策を推進していく決意の表れであると考え、評価いたします。
本区のいじめの認知件数は、ふれあい月間中の調査報告によると年により変動はあるとはいえ、いじめは残念ながら人が集まる場ではほぼ必ず発生します。大人であれば転職したり、引っ越したりして環境を変えることもできますが、自身を取り巻く世界の全てが学校や地域のみであるこどもに逃げ場はありません。被害者には一生の心の傷になり、中には自ら命を絶つといった痛ましい出来事も起きています。また、加害者も心の闇を抱えていることもあります。
本条例案の提出にあたっては本区の様々な背景や必要性を総合的に鑑みて検討を重ねられたことと推察いたします。一方、実際いじめはその根が深く一筋縄ではいかない問題であり、本条例を制定しただけでは実際の効果の程は未知数です。本条例を制定するだけでなく実効性あるものにしなければならないと考えますが、本条例案策定への想いや意図するところなど、本条例制定の意義について、区長の所見を伺います。また、本条例制定後はどのようにいじめ防止を推進していくのでしょうか。いじめの早期発見のためには、心の健康を守り把握する取り組みも必要だと考えます。学校によっては「心の天気」を活用して子供たちに今の気持ちの認識と把握を行っていることは承知しております。併せて、オンラインで匿名相談できる体制をつくることで、こどもの心の健康を守るとともに、早期発見によるいじめ防止対策にも繋がっていくのではないかと考えます。
いじめを防止し、子どもが加害者や被害者になることを防ぐため、具体的にどのようなスキームと対策を推進していくのか、教育長の所見を伺います。2.区立中学校の部活動改革と一般社団法人「渋谷ユナイテッド」について区長発言にもあった部活動改革を実現するために設立する一般社団法人については、我が会派からの令和三年第一回定例会での質問に応え、当該課題に取り組んだものであることを評価するとともに、全国に先駆けたモデルになることを期待しております。
先程の区長発言では、「渋谷の特性を活かした多くのパートナーの皆様に御協力いただきます」とありました。一般社団法人として組織されることにより、今後アスリートのセカンドキャリアとして活用できるようになるのではないかと考えますが、同時に教員の中には部活動の指導に意欲を持つ方もいらっしゃいます。そういった方々を巻き込み、子どもたちの部活動が魅力的に多様化し活発に行われるようにするため、当該一般社団法人がどのように「渋谷ならではの部活動改革」を推進していくのか、そのビジョンとスキームについて、まず区長の所見を伺います。また、本件についての我が会派からの令和三年第一回定例会での質問に対して、区長から「区内のあらゆる世代の文化・スポーツ活動を、生涯楽しめる部活動と捉える契機である」と答弁がありました。また、先程区長からは「総合型地域クラブを目指す」との発言がありましたが、本区では既に各地域クラブが存在しております。既存のクラブとどのように共存し整合性を図り、あらゆる世代が生涯楽しめるスポーツ活動を形成していくのか、区長の所見を伺います。
さらに、教員の働き方改革の視点からは部活顧問の負担軽減となり、授業の質の向上に寄与するとともに、教員不足の解消にも資すると考えます。今後学校はどのように部活動に関与し、教員の働き方改革を進めていくのでしょうか。教育長の所見を伺います。
3.放課後クラブについて本区では、全区立小学校内に放課後クラブを開設しており、利用人数に応じて事業者が指導員を配置して運営を行っていると承知しています。昨年から続くコロナ禍での放課後クラブは、教育課程から開放された子供たちが、全力で遊んだり、じゃれあったりしているところに距離をとらせ、正しいマスクの着用を促しながら運営していることは承知しております。しかし、児童数の多い学校では、利用できる教室が制限されており、十分な感染対策をできる距離が取りにくく、密になりやすい状況です。
利用者数が日によって変化する放課後クラブで、利用者の利便性を確保しつつ安全な学校施設利用をすすめるためには、学校と放課後クラブ運営委託事業者、そして教育委員会が円滑なコミュニケーションをとり、調整をする必要があります。更に、一部の放課後クラブでは、学校施設の利用にあたって、学校とのコミュニケーションに課題があると仄聞しております。
また、現状を解決し、安全に運営するために、利用できる会議室や特別教室の範囲を広げ、現在の資源を最大限に活用できるように学校に協力を求める必要があると考えます。放課後クラブの学校施設の利用の在り方について、教育委員会では学校や放課後クラブ事業者とともに協議するようにできないでしょうか。教育長の所見を伺います。来年は放課後クラブの事業者に対するプロポーザルの年にあたります。保護者の皆さんに安心して放課後クラブを利用していただくためには、事業者が学校や教育委員会と連携し適切に運営していただく必要があります。このためには、事業者自身が経験や資格がある指導員、学校や保護者との連携ができる責任者、コミュニケーションが取れる人材を確保することが必要ですが、人材を確保するためには経費が必要です。このため来年度予算において、事業者が経験のある人材や安定稼働できる人員を確実に確保できる環境整備が必要と考えます。教育長の所見を伺います。
4.ハイブリッド化の推進について本区では子ども全員にタブレット配布が実現されていたことから、オンラインの活用が進んでいること、今年からは対面の授業とオンラインの授業を融合したハイブリッド化を進めており、夏には海外とオンラインで繋いだ授業を開催したことは承知しております。
こうしたハイブリッド化の潮流は、保護者とのコミュニケーションにおいても有用だと考えます。三者面談や進路相談など、保護者に直接会い話すことでコミュニケーションが円滑になり、家庭環境も推測できるなど大切なことであることは承知しております。しかし学校の用事のために、働く保護者がそのたびに休みを取るのは大変ですし、その時間分の収入が減ることは死活問題です。保護者の会議や面談もリモート参加を可能とし、コロナが収束した後もハイブリッド化を進めるべきと考えますが、教育長の所見を伺います。以上につきまして、区長、教育長の答弁の程、よろしくお願いいたします。
教育現場において保護者会や面談もリモート参加を可能とするハイブリッド化の推進や、放課後クラブの環境整備を提言。「渋谷区いじめ防止等対策推進条例」策定の意義、一般社団法人設立による区立中学校の部活動改革推進のビジョンやスキームを質しました。
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ただいま区長、教育長より、数々の提案に対して意をお酌みいただき、大変前向きで力強い御答弁をいただき、誠にありがとうございました。
以下、若干の所感を申し述べさせていただきます。●まず、低炭素な街づくりについては、前向きな答弁をいただきました。将来的な課題としては、ワイヤレス給電の実装があります。走行中に給電できれば電気自動車単価も下がり、バッテリー製造時のCO2排出も削減できます。東京大学が大阪万博での実証実験移行を予定していますが、本区でも社会実装に向けて実証実験ができると考えられ、今後は新しい時代を視野に入れた施策展開を期待します。
●次に経済活性化についてですが、商店街の「意欲的なチャレンジについて支援を検討する」と商店街の活動を後押しする答弁をいただきました。コロナ禍で困窮する商店街、各店舗の活性化に繋がる施策を期待します。
●社会的起業家支援については、恒常的な拠点形成やLABOの設置について前向きな答弁をいただきました。またソーシャル・インパクト・ボンドやファンドの組成についても議論を深めるとのことで期待します。
本区においては良い循環を持つエコシステムが重層的に形成されつつあると考えますので、このような支援を通じて社会的起業家がより一層活躍できるシステムを構築して頂きたいと思います。●デジタル・デバイドの解消には環境整備とともにボトムアップでの根気強い支援が必要です。今後本区でも潮流があるようでしたら「ICTカフェ」を設置し、自由に使えるPCやタブレットを設置してモバイルアクセス支援を行い、常駐者がサポートする体制を整備することを要望します。
●不妊助成については、女性活躍社会の推進のため、国では小児・若年世代癌患者に対して卵子・精子の凍結保存への助成が始まりましたが、今後本区においてもその裾野を広げた助成を行い、自分らしい生き方を追求できる社会が実現することを期待します。
●教育長からは教育政策について前向きで丁寧な答弁をいただきました。
今後も本区の未来を担う子どもたちの健やかな成長の為、全力で教育政策に取り組んでいただけますよう期待いたします。最後になりますが、私ども渋谷区議会 自由民主党 議員団は、長期的視点に立ったまちづくりを推進するため、変化する時代の機微を捉え、想像力をもって未来を切り拓き、渋谷区のより良い未来のため全力で取り組んでいくことをこの場にお誓い申し上げ、私の質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。